today 日本語版 136

軌道更新の直後に走行できる線路

軌道更新とバラストふるい分けという2つの作業を1つの機械で行えば、時間と費用の面で大きなメリットとなります。

この種のものでは当社初の複合機械「RU 800 S」は、2006年から数々の現場で大きなポテンシャルを発揮し続けています。そしてこのほど、さらにパワーアップした新しい「RUS 1000 S」が、未来の保線に向けてその優れたコンセプトを引き継ごうとしています。先代モデルと同じように、この機械はプラッサー&トイラー社のパートナーシッププロジェクトから生まれました。プロジェクトでは、オーストリア・リンツに拠点を置く建設会社スヴィーテルスキ(Swietelsky)が機械を扱う事業者側として積極的に関与し、影響力を発揮する機会が多く設けられていました。

軌道更新とバラストふるい分けを1つの機械で一度に

 軌道更新とバラストふるい分けは、通常は別の作業としてそれぞれ独立して行われます。まず、道床交換機で余分な砕石を除去し、それから軌道更新車で軌道を更新します。こうした作業のためには、これまで2度の週末を使って線路を閉鎖することが少なくありませんでした。

 当社の軌道更新・バラストふるい分け車は、2種類の機械を1台に組み合わせたものです。これにより、2つの作業を1回の工程で行うことができます。工期が短縮され、運行への影響を低減できることから、大きなメリットをもたらします。RUS 1000 Sの使用により、保線のための線路閉鎖期間を短縮したり、以前と同じ閉鎖期間で長い区間の軌道を交換・更新したりできます。また、これまでは通常、夜間の線路閉鎖間合にサイクルで作業を行い、日中は旅客輸送のために軌道を使用していました。このような条件下では、RUS 1000 Sはまさに最適のシステムです。作業直後から時速60キロで走行できる状態に軌道を仕上げることができるためです。

オーダーメイドで独特のデザインを

複雑な機能を備える高性能機械への要求事項は、発注者によってざまざまです。製造の際には国別に異なる基準だけでなく、個々の特殊なニーズへの配慮も必要です。当社の「個別設計」というラインでは、お客様の特別なご要望にお応えいたします。オーダーメイドで機械を設計・製造し、特に現場でのお客様のご経験を活かした製品を手がけます。

2段階のバラスト撤去

 マクラギ間のバラストの撤去は、メインスクレーパーチェーンで行います。これは、古いマクラギをすでに撤去し、新マクラギがまだ設置されていない空隙で作動します。マクラギ外周のバラストは、2台の道床肩部掘削ユニットで別に行います。このような2段階作業であれば、幅が狭く、突起の少ないコンパクトなスクレーパーチェーンで十分です。

 RUS 1000 SやRU 800 Sは、例えば橋やプラットフォームなどの狭い場所でも連続作業ができます。その他の機械の場合、固定された構造部との距離を確保するために、軌道を正しい位置に移動させるという準備が必要ですが、当社の機械であればそうした事前作業が不要です。しかも、作業前の軌道レベルに比べ、それよりも低いレベルに設置することもできます。

数々の現場で実証されたRU 800 Sの経済性

 RU 800 Sは、14年以上にわたってその信頼性と有用性がヨーロッパで認められてきました。この技術への関心がますます高まっていることは、その利用状況からも明らかです。RU 800 Sはこれまでに欧州10か国(ドイツ、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、スウェーデン、チェコ、ハンガリー、スロバキア、スイス、オーストリア)で導入され、距離にして約2000キロの軌道の更新とバラストのふるい分けを行ってきました。ここ数年は平均140~150キロの距離の整備に利用されてきましたが、その多くの場合が短距離の区間をいくつも組み合わせた工事でした。その際、非常に効率の高い作業が行われたケースもあります。例えば、スウェーデンでは2200mの距離が10時間で整備されました。このような工事現場では、資材関連のロジスティクスが決め手となります。

伝統と革新の融合 RUS 1000 S

 RUS 1000 Sのコンセプトは、軌道更新車とバラストふるい分けユニットを組み合わせた作業車RU 800 Sをベースにしています。この機械に関する現場での知見や経験の数々が、新しいRUS 1000 Sの技術に活かされています。機械の開発におけるプラッサー&トイラー社、スヴィーテルスキ社、オーストリア連邦鉄道のパートナーシップにより、RUS 1000 Sは最後の調整を終え、これから現場に導入されます。

「個々のユニットを調整し、効率的に使える状態にするのは非常に複雑な作業で、時間もかかります。それでも、作業を始めてみると、すぐに機械が私たちの要求を満たすに違いないと感じました。事実、試験段階ですでに1200mもの距離の軌道を1回のシフトで更新できました」

スヴィーテルスキ社 鉄道建設機械部門
マティアス・シャウアー

使用範囲の拡大

 新型機械の各作業ユニットの品質や性能は、全体的に向上しました。先代モデルと同様、技術的に適切な順序で作業をこなします。まずバラストふるい分け、それから新マクラギの敷設です。また、RUS 1000 Sの作業半径はわずか250mです。このことは、オーストリア・アールベルクでの工事で実証されています。駆動力もさらに増加し、30‰の急勾配区間も問題なく走行できます。さらに、機械をヨーロッパ全域でフル活用できるよう、車両限界をUIC 505-G1に合わせて限定しています。環境面でも機械は改善されています。CO2排出量は最大30%削減され、騒音も低減されました。

品質と性能が一段と向上

 新しいふるい分け装置の導入で、同時に無駄なくふるい分け作業を行うことができるようになり、1mあたりの作業効率が上がりました。また、マクラギ敷設作業の効率も向上しました。1分間に10本を敷設できるようになり、異なるタイプのマクラギ(コンクリート製モノブロック、コンクリート製ツーブロック、木製)も扱えるようになりました。

 RUS 1000 Sは、道床の層をしっかり作っていきます。ふるい分けされたバラストの一部はスクレーパーチェーンの背後から直接軌道内に戻され、あらかじめ突き固められます。そのため、新マクラギ敷設のために安定性の高い路盤が得られます。ふるい分けられたバラストの残りは、新マクラギとレールを設置・連結した後、道床肩部掘削・タンピングモジュールのそばから挿入します。

直ちに走行できる軌道

 その直後、軌道のリフティング・ライニング・タンピングが行われます。この機械には、リフティング・ライニングユニットとタンピングユニットで構成されるタンピング装置が搭載されています。この機種では全く新しい形のシステムです。最初のタンピング工程(通常は全3工程)は軌道更新車での作業に含まれています。つまり、RUS 1000 Sを使った作業の直後には、もう安心して列車を走行させることのできる軌道に仕上がるのです。

現場導入への道のり

 2019年春に完成しRUS 1000 Sは、その年の夏に初の試運転をオーストリア・ニーダーエステライヒ州のヴァッハウ地方とフォアアールベルク州ドルンビルン近郊で行い、秋にも同州アールベルク地方の試験工事でテストしました。そして同年12月には、ニーダーエステライヒ州・トライスキルヒェン近くのウィーン地方鉄道の工事現場で実際に稼働させました。これらの試運転は、機械のさらなる最適化と作業員の研修を兼ね、目標とする性能に近づける目的で行われました。研修を受けたのは作業員40名(実際の作業はこれよりもずっと少ない人数で行う)で、できる限り日常の作業に近い条件下で新しい機械を操作しました。

 2020年春、RUS 1000 Sはシュタイアーマルク州フローンライテン近郊でのPCマクラギを使った複線区間の工事で使用されました。そこでの経験がさらなる性能向上に活かされ、自動ガイダンスコンピュータALCも本格稼働しました。タンピングパラメーターと軌道線形は、デジタルデータ記録システムDRPで記録されます。こうして軌道状態がすぐに機械に記録され、軌道開通の是非を判断する材料となります。

 ハンガリーでの8800mに及ぶ区間の大規模な改修工事では、新しいRUS 1000 Sを初めて試験的に7日間フル稼働させる機会に恵まれました。その際、1分間にマクラギを10本敷設するという目標も達成できました。機械が作業をしながら通過した後の軌道線形は、非常に満足のいくものでした。作業員も機械を使いこなし、10時間で1600mもの距離の作業を行うことができた日もありました。こうして新型機械は、現場に導入される準備が整ったのでした。

狭い掘削幅のメリット

  • プラットフォーム付近の軌道の移動など、機械周辺の軌道の事前作業が不要
  • プラットフォームやコンクリートのトラフ橋、排水溝付近、トンネル内など、狭い環境でも機械の装備を変えずに連続作業を行うことができる
  • スクレーパーチェーンと道床肩のサイドカッターを組み合わせ、バラストの掘削幅を3000~5800mmに変えることができる

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