today 日本語版 136

似て非なる双子

二卵性双生児は共通点をたくさん持っていますが、その個性は異なります。新しいタンピングユニット「2X-4x4」にもそれと似たようなところがあります。機械の片側は分岐器の整備向け、もう片側は主に軌道の保守向けの仕様となっています。

NRCグループ

(Nordic Railroad Construction Group)は、保線業界では比較的新しい企業です。2011年に「Team Bane」という社名で設立されました。現在2500名の従業員を抱え、北欧諸国(ノルウェー、スウェーデン、フィンランド)の鉄道インフラの分野を代表する企業です(同社調べ)。当初からプラッサー&トイラー社の技術を取り入れています。

この新型タンピングユニットは、異なる2つの機能を持ち合わせています。ユニットは2部構成で、分岐器内の作業ではその片方が高い移動性と柔軟性を発揮します。一方、軌道では作業効率が重視されるため、両方のユニットが2丁突きモードで同時に稼働します。もう片方のユニットは、可動部分が少ないのが特徴です。この新しい合体型機械は、高性能・高精度・高信頼性に加え、持続可能性というプラッサー&トイラー社が新たに目指す価値を体現するものです。「似て非なる双子」の強みを組み合わせることで、摩耗低減が持続的に実現されます。

汎用性の高いタンピングユニットをフル活用

 同じ1つの機械で軌道と分岐器内のタンピング作業を行うのは、珍しいことではありません。ただ、これまでと違うのは、この2X-4x4タンピングユニットの性能です。ユニットは汎用性の高い4分割方式で、分岐器のタンピングは1丁突きモードで行い、軌道と分岐器の幅の広い部分では2丁突きモードで効率よく稼働します。複数の分岐器や短い区間の作業を一度でできるため、駅構内や分岐、その他の施設にも非常に適しています。また、可変性が高いことから、逆に軌道の整備をメインとし、分岐器にも時々利用するという手もあります。

新しいUnimat09-2X-4x4/4Sの2in1タンピングユニット

 スカンジナビア諸国向けの2台の機械には、すでにこの新しいユニットが搭載されています。スウェーデンとノルウェーの鉄道事業者向けに製造された「Unimat 09-2X-4x4/4S」です。それぞれ同じタイプのタンピングユニットとスイーパーユニットが装備されています。それ以外は各社の要求事項に合わせた仕様となっています。

最長級の車体を持つマルタイ

 新しいUnimat 09-2X-4x4/4Sは、最長級の車体を持つマルタイです。発注者はノルウェーのNRCグループで、オーストリア・リンツで生まれたこの機械を導入し、その画期的な作業コンセプトを活用していこうとしています。全長56mにも及ぶ車体には、休憩スペースや作業場なども設けられています。NRCグループ向けの仕様では、車軸への負荷を低減するために、運転室付きフロントワゴンと複数の車軸を持つ4分割方式のユニットとなっています。

 全長56mのUnimatは、2台の駆動装置(各600kW)を使って走行します。ベルゲン~オスロ間には25‰の勾配が20キロ続く区間があり、そこを少なくとも時速60キロで走行しなければならないためです。Uni­mat 09-2X-4x4/4Sの軸重は20トン以下と少ないため、欧州線路等級C2の区間も問題なく走行できます。

 当社のリンツ・トレーニングセンターでは、2020年1月にNRCグループの従業員10名を対象に、新しいUnimat 09-2X-4x4/4Sを使った作業の訓練を実施しました。その際、SmartALCを用いた軌道線形測定や検測記録装置DRPによる線形記録の作成に関する研修も行いました。

 異なるタイプのユニット2台を搭載した初のマルタイUnimat 09-2X-4x4/4Sは、2020年1月末に当社リンツ工場から出荷され、ノルウェーで稼働を開始しました。NRCグループは高パフォーマンスを誇る事業者で、所有するマルタイを年間最高240回のシフトで活用しています。新しいマルタイも、すでに100回のシフトで使用されました。

インテリジェントな駆動方式で経済的な運行を

 この機械の特長のひとつは、インテリジェントな駆動方式「PlasserMotionDrive」です。これは2種類の駆動方式を組み合わせた自走式のもので、必要な出力に応じて駆動軸を切り替えることができます。発進時には油圧式で、速度が上がるとトルコン方式で駆動し、その威力を発揮します。これにより、加速度の値が向上し、燃料を節約できます。急勾配区間では、2台目の台車も駆動します。

インフラクラフト・スヴェリエ社

(Infrakraft Sverige AB)は2019年設立の新しい企業で、スウェーデンで拡大が進むインフラ分野で事業を展開しています。インフラクラフト社の従業員は、長年培ったノウハウをもとに、スウェーデンの道路・鉄道網の発展の舵取り役を担っていきたいとしています。

美しいデザインのスウェーデン向け機械

 ノルウェー向けの仕様と比較した場合、この機械は3両編成であるという以外に、特殊なデザインの外観が特徴です。「ブラックビューティー」と名づけられ、車両両端部以外はインフラクラフト・スヴェリエ社のコーポレートカラーである黒で塗られています。

 スウェーデンでは軸重が22.5トンまで認められているため、運転室も機械の編成に組み込まれています。スウェーデン仕様のものがタンピングユニット、駆動装置、スイーパーユニットの3編成であるのはそのためです。2020年夏の終わりに機械の検査が完了し、スウェーデンに出荷されました。


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