today 日本語版 2019/1

極限に挑む耐久テスト

大きく変化する地球環境―それに対応すべく、プラッサー&トイラー社は革新的技術を用いた「E³シリーズ」を開発しました。そのうちの「HTW 100 E³」について、気象風洞装置による厳格な検査が行われました。

厳しい自然環境を想定した検査では、次のようなシナリオが用意されていました。日中の気温は20°Cと、穏やかな夏の終わりを思わせる陽気のある日。夜になると、気温は急激に低下します。突然、氷点下5°Cに下がり、さらに氷点下30°Cの寒さとなります。それから24時間後、今度はコートや帽子、手袋などがいらなくなります。極寒のシベリアから、まさに砂漠へひとっ飛びしたような状況です。気温は摂氏50°C。どんな機械にとっても極限環境です。

革新的な技術を搭載したプラッサー&トイラー社の「HTW 100 E³」は、Rail Tec Arsenal(RTA)社の気象風洞でのこうした耐久テストに見事合格しました。試験を担当した当社の製造部門責任者クリスティアン・ヴァイタースベルガー氏は、次のように説明しています。「環境試験を実施した理由は二つあります。まず、新しいバッテリー技術を検査するため、それから、サプライヤーが提示する理論値を確認するためでした」

HTW 100 E³の中核をなすのは、革新的なバッテリーシステムです。このシステムなら、全面的に電気を使って現場の作業を行うことができます。その際の排出はゼロ、騒音も大幅に低減されます。とくに都市部やトンネル内で、その効果が発揮されます。バッテリー容量は、6時間の作業2回分に相当します。バッテリーの寿命を左右するのは動作温度です。

寒冷地などでふと携帯電話を見ると、画面が真っ黒で操作できなくなっていたという経験はありませんか。数分前までは、バッテリーは十分に充電してあると思っていたのに―そこで、どうするか。1953年以来、信頼性と効率性、フロンティア精神を理念として掲げてきた当社は、eモビリティ分野のスペシャリストKreisel Electric社と共同で、HTW 100 E³のための温度制御システムを開発しました。

温度制御システムの秘密

電池の動作温度が-20°C~+40°Cであれば、バッテリーからの電力供給は確保されます。最適な温度範囲は+25°C~+35°Cです。Kreisel Electric社のソフトウェア開発担当者ジークフリート・アンシューバー氏は、このシステムについて次のように説明しています。「この新しいバッテリーの中には、200台を超えるセンサーが搭載され、常に温度を計測しています」

「温度制御システムにより、バッテリーを温めたり冷やしたりすることで、バッテリーの許容範囲内の動作温度を保つことができます。そのため、外部環境からの影響を全く受けずにすみます。しかも、氷点下20°Cの環境で機械を止め、置いたままにしても、翌日にまた熱ポンプでバッテリーを温めればよいのです」このような限界に近い状態を気象風洞の中でシミュレーションし、車両のさまざまな機能について試験が行われました。

その際、専用の計測センサーを搭載したコンピュータを用いて、ウィンドウのデフロスターから運転室のドアまで、温度や湿度のわずかな変化や性能・圧力曲線のデータをリアルタイムで記録しました。オーストリア・ウィーンの21区にある試験場では、ボタンひとつ押すだけで、雪も降れば太陽も照りました。

「ウィーンで気象風洞試験設備を運営するRTA社の施設では、天候が機械やユニットに与える影響を、実際に近い条件化で調べることができます。ここではあらゆる温度や降水形態を設定し、風洞風速で走行速度をシミュレーションすることが可能です」とRTA社のプロジェクトマネジャー、アンドレアス・ローゼンクランツ氏は話しています。RTA社の施設は、鉄道車両向けに作られているそうです。「シャーシダイナモ上で、被試験体を実際に動かすこともできます」(ローゼンクランツ氏)

「機械は瞬時に威力を発揮すべき」

現実に近い環境設定といえば、ホットカーペットや加湿器を使いながら、運転室内で人体から熱や湿気が発生する状況も再現されました。ヴァイタースベルガー氏は、基本的にHTW 100 E³は過酷な環境向けに設計されていると強調します。ただし、「架線作業車に関しては、数週間使用せず、氷点下の屋外に停めておくことが少なくありません。ですから、架線にトラブルが発生した場合、作業車は瞬時にその威力を発揮する必要があります」(ヴァイタースベルガー氏)

そのため、帰納的推論に基づいた具体的なデータを集めることが重要だったといいます。たとえば、氷点下30°Cでは、ディーゼルヒーターを使った予熱にどれだけ時間がかかるのか。また、各ユニットが性能を発揮するには、どれだけのエネルギー出力が必要なのか。そうしたデータです。そのためにまず、HTW 100 E³に合計20台以上のセンサーを装備しました。その準備に3日、設定したシナリオに基づく実験に4日かかりました。

ヴァイタースベルガー氏は「あらゆる温度で実験することで、電子制御盤の内部に結露が発生するかどうかを確認できました」と話します。「私たちは今後、機械の運転に役立つ実用的なデータをお客様に提供していきたいと考えています。実験で得られた結果を、データとして記録していきます」(ヴァイタースベルガー氏)実際の自然環境では、80°Cもの温度差が生じることはありませんが、極限に挑む耐久テストに合格したHTW 100 E³なら、どんなに過酷な環境でも問題ありません。


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