today 日本語版 2019/1

鍵はインテリジェンス

ビッグデータ

ビッグデータとは「大量のデータ」という意味ですが、実はそれだけではありません。むしろ、さまざまなルートから集められた、膨大な量のありとあらゆる情報を指します。それは大きな課題を呈するものであると同時に、未来を開くチャンスでもあります。プラッサー&トイラー社の新技術(開発)責任者フロリアン・アウアー氏は「私たちは、従来のものを変えてしまうのではなく、向上させていきたいのです」と強調します。当社の最優先課題は、鉄道交通の信頼性と効率性、そして何よりも、安全性を高めることです。では、どうすればそれを実現できるのでしょうか。「ビッグデータ」はどれだけ役に立つのでしょうか。

たとえば、長さ1キロの軌道には、なんと1667個ものパーツが用いられています。そこにあまりにも多くのセンサーや技術を使うとすると、莫大な資金が必要になります。しかも、システム自体が複雑で脆弱になり、エラーも生じやすくなります。そこで当社では、高品質・高性能のマルタイと検測車を用いながら、開発に必要なデータを集めています。

「私たちは、支援システムやインフラ事業者向けクラウドの活用を通じて、主に機械の知能強化に向けて取り組んでいます」と、アウアー氏はミュンヘンで開かれたイベント「デジタル化―ビッグデータを鉄道に役立てる」で、このように説明しました。 「私たちは軌道状態の傾向を把握しているので、データ数値を読み取るのも難しくはありません。したがって、作業をより楽にするためのツールをお客様に提供することができます。デジタル化は、関係者それぞれにとって間違いなく有益です」(アウアー氏)

2013年、ドイツは伝統の技と先端技術を融合させる取り組みとして、第4次産業革命と位置づける「インダストリー4.0」をスタートさせました。その最大の狙いの一つは、ビッグデータをスマートデータ、つまり経済的な持続可能性を確保できる有用なデータソースに変換することです。

インダストリー4.0 ― 急速に進むデジタル化は想像を超えた可能性をもたらしますが、鉄道業界はそれによってどう変わっていくのでしょうか

革新的なプロジェクトを模索するドイツ鉄道とスイス連邦鉄道

ドイツ鉄道は、スイス連邦鉄道(SBB CFF FFS)やシーメンス社など、人や物資の移動・運搬サービスを提供する企業と共同し、プラットフォーム「Beyond1435」を立ち上げました。同プラットフォームのホームページには、次のように書かれています。「ドイツ鉄道は、標準軌1435mmの路線を使って、数え切れないほどの人やモノを出発地から目的地まで輸送してまいりました。このデジタル社会では、従来のモビリティの概念はひっくり返されていきます」社内ベンチャー制度から生まれたスタートアップの力を借りながら、21世紀に向けた革新的なソリューションやビジネスアイデアを見出そうという取り組みです。

ドイツ鉄道の新デジタルビジネス責任者マリウス・ピグラ氏は「将来に向けて企業力を強化し、次のステップへ進むことを目指している」としています。ミュンヘンのイベントでの司会を務めたルレオ大学(スウェーデン)のディエゴ・ガラー教授は、次のように付け加えています。「ビッグデータは、全く新しい道を切り開きました。今やインフラ事業者は、あえて外部サービスを利用しています。外部サービスは、大量のデータから有用な情報を抽出し、コアビジネスの最適化に役立つためです」

その最大の目的は、将来予測です。たとえば、今後数年間に旅客の動向やニーズはどのように変わるのか。利益を上げるには、どのような要求を満たす必要があるのか。どうすれば時間の正確さを向上させることができるのか。これらを実現させるには、ネットワーク化が不可欠です。

まずはトラブルが発生する前に、誤差要因を検知しなければなりません。スイス連邦鉄道のユルグ・バルジガー氏は、次のように指摘します。「私たちは、リアクティブ(事後対応)型からプロアクティブ(事前対応)型の保守・計画へ移行する過渡期にあります。データを使えば、稼働率を上げたり、路線を監視したり、作業をより手軽に調整したりすることができます。デジタル化は、私たちの日常業務の効率化やリスク発見、満足度の向上をもたらす解決策を見つけるのに役立ちます」

P&T Connected社が生む新しい可能性

ビッグデータは「賢い意思決定」のための新しいツールである、とベルンハルト・マイヤー氏は確信しています。「それは鉄道システムの競争力向上をもたらすものです」(マイヤー氏)プラッサー&トイラー社の子会社であるP&T Connected社のCOOマイヤー氏は、遠隔診断システム「PlasserDatamatic」からのデータの記録・処理・ネットワーク化・集約・分析に携わっています。こうした業務の目的は、保守作業に関する具体的な指示を導き出すことです。もはや定期的なメンテナンスではなく、軌道状態を基準とした保守を実現させようというものです。たとえば、車両や線路をめぐって不測の事態が発生した場合、集められた情報を元に最善の対策を講じることができます。お客様のニーズにしっかりお応えすることができるのです。

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