today 日本語版 2019/1

デジタルツイン保線の新しい世界

インダストリー4.0時代のデジタル変革は、利用者にとっては移動需要の変化、鉄道事業者にとっては軌道経営の新たな可能性という点で、鉄道にも大きなチャレンジとなっています。デジタル革命は物事の秩序を変え、新しい見方や作業の仕方が必要となります。



当社では、軌道の仮想空間の双子ともいうべきデジタルツインについて集中的に取り組んでいます。保守機械とインフラの連携の新しい道を切り開きます。

これからの時代、構造に関するデータや検測結果、データモデル、時間・費用データなどを組み合わせた、線路に関する多次元アプローチに焦点が当てられるようになります。ここでは、目的ごとに分かれたモデル(Divided Concept)から、統合された包括的なモデル(Integrated Concept)までの道のりをご紹介します。各保線機械の情報が盛り込まれたインフラデータのネットワーキング化により、軌道のメンテナンス作業にも付加価値がもたらされます。

軌道の持続可能な最適化の基盤となるデジタルツイン

  • 現実の軌道の状態を測定し、その特徴を全てバーチャルで再現します(デジタルの双子)。
  • 仮想軌道で総合的な検査を行い、最適化の可能性について調べます。これにより、保守作業が軌道設備のライフサイクルにもたらす効果を正確に導き出すことができます。得られた結果は、管理者の意思決定の際に役立てることができます。
  • 現実の軌道と仮想軌道について得られたデータの目標値と実測値の比較は、実際に最適化措置を実施する際の基盤となります。

仮想空間での双子の軌道

現実の軌道に関連した全ての要素が仮想空間(デジタルツイン)で再現されます。それは、一貫性のあるデータバンクに基づいた軌道モデルで、豊富な情報とそれぞれの相互依存関係が盛り込まれています。デジタルツインは、BIMに対応したプラン作りのために質の高いデータベースを作成するため、それぞれ異なる専門的な視点からも一貫したアプローチを可能にします。

鉄道建設における

BIM (Building Information Modeling)

デジタルトランスフォーメーションが進み、BIMとともに建設業界でもますます注目される今日、建築物の設計・建設・運営は大きく変化しています。BIMは設計上の論理やデザインの質のほか、運営面での効率をも向上させます。このようなBIM活用方法は、線路のような線状構造物にもますます取り入れられています。それに対応するスペックは、現在作成中です。

未来をつかさどる統合オンライン鉄道管理システム

これからの時代、データ運用はインフラの資産管理とライフサイクルマネジメント全体の持続可能な最適化に一層役立つようになります。持続可能なインフラ管理計画は、正確で完全な情報の上に構築されます。データと情報は、インフラ構築プロセスと全体組織の改善に大きく影響します。

今後の課題は、「鉄道インフラのためのBLM(Building Life-Cycle-Management/ライフサイクル管理の手法)」 を取り入れながらネットモデリングを進めることです。これにより、鉄道の設計・建設・運営の全ての分野における共同作業が強化されます。ライフサイクル全体にわたって生成された全てのデータを追加することで、統合オンライン鉄道管理システムは、持続可能なインフラ管理に大きく貢献します。

プラッサー&トイラー社でデータ管理のツールを開発

軌道設備データの収集とネットモデルへの埋め込みを自動で行う設備検知システムの需要は、近い将来に増加します。当社のデジタルツインのモデルと、当社により開発されたデータモデルの自動記録・作成ツールは、そのための重要な第一歩といえます。このツールにより、実際の軌道の包括的な検測が実現されます。構造物の認識のためには、今や人工知能の使用が不可欠となりました。

クラウドアプリケーションにも最適

デジタルツインは、BIMのように一般的にはクラウドコンピューティングのためのソフトウェアとして扱われます。クラウドの使用によってのみ、全てのプロジェクト関係者が必要な最新データを呼び出すことができ、モデルを使って変更をリアルタイムで追跡・実行できます。その際、共通したデータ交換方法や互換性のあるソフトの活用、つまりオープンなインフラ管理プラットフォームがますます重要となります。

BIM(Building Information Modeling)とは?

「Building Information Modeling(BIM)」は、建築物の設計・建設・運営をめぐる複雑な要素を簡素化し、ミスが起きる確率を減らし、コストを透明化し、工程の速度を上げ、プロジェクト関係者全員の協力体制を強化します。BIMは単なる仮想建築モデルやCADのようなソフトではありません。設計・建設・運営の各プロセスの進行を管理する作業テクニックです。多次元のBIMモデルはこうして「Building Lifecycle Management(BLM)」となり、各側面を組み合わせて実現されます。

  • 3Dネットワークモデルで構造描写 鉄道網の構造描写は、国際鉄道連合(UIC)のRailTopoModelなどのモデルを基盤としています。ネットワークは細かく張り巡らされ、マクラギなど位置情報を持つ個々の部材も組み込まれています。
  • 時間面 全ての情報が最低一日単位でデータバンクに保存されます。過去の記録からさまざまな傾向を割り出すことができます。
  • コスト面 コストという概念は、ここでは広く捉えられます。建設費用、運営費用、また減価償却資産も計上され、保守工程に仕分けられます。
  • 持続可能性の面 持続可能な線路に不可欠な全ての情報が保存されます。ユニットの製造や組み立ての際の品質保証も考慮されます。
  • ライフサイクルマネジメント面 メンテナンス工程では、軌道の状態監視、所定の保守作業、再構築、補修、交換などの記録が残されます。効率のよいライフサイクルマネジメントには、各設備の品質管理の正確な記述が必要です。除雪や除草などの作業の情報も含まれます。
  • 運転面 ここでは軌道の摩耗特性に関連するパラメーター、例えば車両の種類、数、レールと架線の応力などが記録されます。現場に固定された測定装置が非常に重要です。

スマートマシンへの道 

PlasserSmartMaintenanceイニシアチブ

デジタルツインの準備が整い、適切なデータを備えた状態となれば、あとは保線機械と連携させればよいだけです。当社の「PlasserSmartMaintenance」イニシアチブで開発されたアプリはますます増えています。メインプラットフォームは、ネットワークで結ばれたクラウドソリューションとウェブサービスの両方が使えるアプリです。個々の機械や車両、インフラに関する重要なデータへの簡単なアクセスが特徴です。

このようにして機械は次第に知能を備え、「スマートマシン」となります。当社では品質と信頼性の向上のため、またさらなる自動化と高い透明性を望むお客様の声に応えるため、デジタル化の可能性を模索しています。

デジタルツインは、保守機械とインフラの連携作業の道を新しく開拓します。行われた作業の質については、発注者が直接確認できます。また、危険地帯での人員を減らし、管理を安全なオフィス内へ移すことができます。インテリジェントな評価方法と連携して傾向を観察することで、鉄道事業での予知保全対策についての分析や提案を可能にします。

目的と利点

  • 区間責任者をサポート
    保守点検計画のために、設備責任者は担当区間の概要を把握する必要があります。新しいデジタルツールが対応に関する動作指示を出すため、手軽にサポートが受けられます。検測データは視覚化・分析され、必要な保守作業を計画し(ワークオーダー)、管理することができます。
  • バーチャル現場調査
    デジタルツインは、各鉄道インフラ事業者がオフィスから行うことのできる、それぞれの独自の基準によるバーチャル現場調査「PlasserVirtualTrack」(目下開発中)のベースとなります。現地の作業現場調査の必要がなくなり、コスト節約と同時に現場責任者のリスクを最小限にとどめることができます。
  • 軌道線形のエディタ
    取得・生成されたデータは、全ていろいろな形で他のシステムに活用することができます。線形メインデータバンクは、線形検測システムと保線機械の誘導コンピュータと、設計データや検測データの交換を絶対値と相対値の両方で行います。

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