today 日本語版 138

革新をリードするプラッサー&トイラー社

代替駆動システムの台頭

プラッサー&トイラー社は、その歴史を通じて内燃機関の恩恵を受けてきました。創業以来、約1万7000台の機械に内燃機関の技術を用いましたが、それにはしかるべき理由があります。内燃機関は信頼性が高く、保線に必要とされる特性を備えているためです。長年にわたって完成度を高め、実証されてきたこの駆動コンセプトは、良好な負荷プロファイルを示し、インフラの整備されていない地域でも燃料供給が比較的簡単です。

 それでも当社は2015年、保線における駆動技術をめぐり、新たな一歩を踏み出しました。保線機械メーカーとしては初となる、ハイブリッド駆動システム搭載の機械を実用化したのです。マルタイ「Dynamic Stopfexpress 09-4X E³」と道床管理システム「BDS 2000 E³」の誕生で、内燃機関と電気モーターの両方を装備した高性能の機械が実現しました。こうして初めて従来のディーゼルエンジンでも、架線からの電力でも、走行や作業ができるようになりました。

 「当時、このような取り組みを始めた理由は、代替駆動コンセプトを求める声が高かったからではありません。むしろ私たちは、長期的には多くの市場が環境配慮を重視する方向に発展していくと予想したためです」E³シリーズ誕生の背景について、ヨハネス‧マックス=トイラー氏はこのように語っています。

 2015年以来、全電動駆動またはハイブリッド駆動の機械はさまざまな製品ラインで設計‧製造されました。その数は13台にのぼります。ただし初期のプロジェクトでは、いわゆる学習曲線の勾配が急でした。

 「私たちは、内燃機関を搭載した機械を何十年にもわたって何千台も製造してきました。この技術を得意としており、あらゆる側面について熟知しています。ハイブリッドまたは全電動のコンセプトを駆動システムに取り入れるのは、なかなかの作業です。また、架線電圧や電磁両立性(EMC)に関する規定など、各国のそれぞれ異なる条件を満たす機械コンセプトを打ち出すのも非常に難しいことです。そうした困難の多くは、すでに乗り越えることができました。それでも、新しいインフラや機械コンセプトに合わせた開発に取り組むたびに、新たな問題が生じ続けています」当社の電気技術開発責任者シュテファン·クレン氏はこのように語ります。

 2015年以来のひとつの重大な発見は、燃焼式コンセプトと電気式コンセプトでは、スケーラビリティが大きく異なることでした。従来の機械では、120kW段階(スケーリングステップ)で駆動力を比較的簡単に調節できましたが、全電動駆動システムではその1段階が120kWの代わりに600kWまたは1000kWになります。全電動駆動システムでは、600kW以下の段階での駆動力の調節は技術的に難しいのです。このことは、機械の設計の際に考慮する必要があります。

 当社の代替駆動システムへの取り組みでは、技術面だけでなく、組織面でもひとつひとつ解決していくべき課題があります。例えば、E³関連プロジェクトの増加に伴い、設計、製造、許認可にかかわる部門に限らず、その他さまざまな部署でも新たなスキルが求められるようになりました。

 こうした状況に対応できるよう、現在も多くの社員が研修を通じて能力向上に努めています。

 新しい駆動コンセプトは、メーカーとしての当社に変革をもたらすだけでなく、一般的にも大きな変化を意味します。お客様にとっての変化も、CO₂排出の面にとどまりません。新しい機械は、保守‧運用の面で業務上のメリットをもたらします。プラッサー&トイラー社のモジュラーデザインは、ライフサイクルコストの面や従来の機械との比較で、その強みを余すところなく発揮します。保守計画を立てやすく、またメンテナンス周期が長いことから、保守費用が少なくてすみ、高額のイニシャルコストもライフサイクルを通じて回収することができます。

 「私にとって、代替駆動システムの開発のほかに選択肢はありませんでした。鉄道はすでに今の段階で、現代が抱える大きな問題の一部を解決する手段となり得ます。支線が電化され、電化区間ではグリーン電力の利用が増え、ますます多くの国で鉄道建設や保線におけるサステナビリティが注目されるようになっています。そうした中、私たちは長年培ってきた革新的な駆動技術を提供する力強いパートナーでありたいと考えています」(ヨハネス·マックス=トイラー氏)

 現在、当社にとっての市場は非常に喜ばしい状況にあります。当社は2021年夏、オーストリア連邦鉄道(ÖBB)からハイブリッド式高所作業車56台を受注しました。さらに、機械46台分のオプション契約も成立しています。このほか、代替技術に関する複数のプロジェクトも進行中です。

 初のハイブリッド駆動の機械を納入してからわずか6年、これで早くも代替駆動システムへの取り組みが実を結んだことが実証されました。「2021年、私たちは代替駆動システムを用いた大型機械シリーズに関する契約を初めて獲得しました。それまでに何年もかけて開発に努めてきたからこそ、こうしたことが実現したのです。2013年から基礎を築きはじめ、培ってきたノウハウは、代替駆動システムを搭載した機械を購入されるお客様のお役に立っています」

 鉄道における代替駆動システムには、明るい未来が待っています。一段と環境にやさしい鉄道づくりに向け、今後もますます重要な役割を果たすことになるでしょう。「サステナビリティをめぐる一連の動きは、単なる流行ではありません。私たちは未来の世代のために、生きる価値のある世界を残さなければなりません。それに大きく貢献する企業を経営していることを、私は誇りに思っています」(ヨハネス·マックス=トイラー氏)

「私が理想とするのは、軌道内外でのあらゆる作業をカーボンニュートラルかつ経済的に行うことができるよう、お客様を支えるポートフォリオです。シリーズは環境を守るだけでなく、商業的な利益をももたらすべきと考えています」

プラッサー&トイラー社 CEO ヨハネス・マックス=トイラー氏



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